九州街道ものがたり「河童伝説」

九州街道ものがたりで「河童伝説」を放映していた。芥川龍之介に出てくるあの河童である。ちなみに7月24日の彼の忌日を河童忌とも言う。
九州は河童の本場といわれ、とりわけ福岡が「河童影」の濃いことで知られており、私の故郷でも、夏になると「夕方泳ぐと河童に引かれるぞ」と、この河童の恐ろしさを大人たちから聞かされたものである。
筑後地方には当時小さなクリークが張り巡らされ、小さいころからこの水に親しんできた。それだけに水の事故も多く、河童に引かれたといって畏れた。
この河童を祭る慣わしが水神祭で、堀の端に葉っぱのついた竹竿を立て、それに菰で編んだ瓢箪型の筒に、河童の好きな藷や胡瓜、南瓜、握り飯などを入れて吊るし、河童のご機嫌を取って水の事故防止を祈ったのである。
このように河童については、山の神、水の神、稲の神などさまざまな説があるが、人間の暮らしにもっとも身近な妖怪だといえる。
放送では「河童曼荼羅」で有名な高塔山(若松)に伝わる山伏の河童退治伝説を紹介しながら、河童と九州人のかかわりにふれていた。

 河童忌や祖母の温みの握り飯  英世

河童1
河童ミュージアム

冬野九月号

いつも通り冬野九月号が届いた。
今月号には秋の様々な句会の案内や、会員のたよりが掲載されている。その中に選者の一言として、よい句(佳句)について高濱虚子の言葉を引用して語られていたのでご紹介しよう。
虚子は「よい句は天から授かるようなものです。あまり苦しんだ時にはよい句は出来ません。かえってすらすら出来た時によい句が多いようです」と述べている。
俳句以外のものにも通じるような気がした。
冬野九月号入選句
 青鷺や間合ひを計る嘴の先
 白秋も聞きし太鼓や船芝居
 日の影を散らし噴きゐる泉かな
 食堂のおばさん逝くや心太
 白百合や座り胼胝なき女学生
 杣人の水場の手入れ河鹿鳴く
 谿間の壊えし窯場や河鹿鳴く
冬野インターネット俳句
 日蓮の太き眼や台風来
 父母も汲みし水もて墓洗ふ
伝統俳句協会インターネット俳句
 仙人掌やインカ遺跡の血の匂ひ
 八月や慙愧に堪えぬ過去ばかり
 手放せしあの田この田も敗戦忌
 銀漢や水族館を上に見る
                      英世

秋めく

今朝は久し振りに冷え込んで、思わず薄い布団を引寄せたほどである。
このような肌に感じる秋の訪れを俳句の世界では「秋めく」と言う。八月末から九月初めになると、山や川のたたずまいがどことなく秋らしくなっていき、眼にも耳にもはっきりと秋を感じるようになる。
流れる雲、澄み切った空、冷たい水の流れ、鳥の声、風にそよぐ芒、こぼれる萩と、目を凝らすとそこここに秋の訪れを見ることが出来る。人間にとっても最も過ごしやすい季節ではなかろうか。
同様の季題に秋立つ(立秋)という季題があるが、それよりもより主観的な思い入れの強い季題かもしれない。
先月末のNHK俳句を楽しむ会の兼題にこの秋めくが出た。その中からやや観念的ではあるが、私の特選句をご紹介しよう。

  秋めくや音なき風に落つるもの   英世

仲秋の花ごよみ

私の書棚の四季花ごよみによれば、仲秋9月の別名には長月、菊開月、菊月、祝月、詠月、紅葉月などがある。
長月は夜が次第に長くなる月の夜長月を略したことから、菊月は菊の花が咲く月であることから、紅葉月は紅葉が始まる季節であることから名付けられた。
昨日もお話したように旧暦との時間差があるので、実際とは少しずれるかもしれないが、
水は澄み朝夕の風もめっきり涼しくなってくる。木の枝にとまった鵙は、荒れ果てた棚田を愁ふかのように時折鋭く乾いた声を発し、この世を牽制し澄明な秋の大気を震わせる。
仲秋の代表的な花を上げてみよう。
彼岸花、竜胆、野菊、コスモス、鶏頭などと、なぜか群をなして野山を覆い尽くす花が多いようである。ことに菊と日本人は切っても切れない縁があり、皇室のご紋章となっていることはご承知の通りである。
そういえば九月号の「グランザ」に菊の紋章の説明があり、楠正成の菊水紋、西郷隆盛の南州紋など皇室から頂いた紋もあると解説していた。

コスモスの風押し渡る岬かな  英世

生駒高原
生駒高原

九月に入る

今日から九月、秋もたけなわ、つまり仲秋である。
九月は一年の中の九番目の月と言ってしまえば、それで終わりであるが、そうも行かないのが俳句を嗜む者の物の見方である。
いつもお話しているが、九月は長月とも言うけれども、実際は旧暦の八月で俳句では葉月と詠むことになっている。
九月は二百十日、二百二十日と大型台風がやってくる季節で、前半は厳しい残暑や夕立に見舞われることが多い。事実今年も八月の終わりごろには、ゲリラ豪雨、集中豪雨で前国的に被害を被った。
中旬からは太平洋高気圧も後退し、前線が停滞し秋の長雨になることもある。
一方、暑かった夏の疲れ、つまり夏ばての解消も大事である。茄子やゴーヤー、茸などの秋の野菜をたっぷり食べて英気を養わなければなるまい。もちろん月見とお酒つきが最高であるが。
歳時記で九月の主な行事を拾ってみた。防災の日(震災忌)、月見、放生会、敬老の日、子規忌、秋彼岸、秋分の日と何となく爽やかなものが多い。
近代俳句の祖である正岡子規の忌もこの9月19日で、俳人にとっては大きな忌日である。子規忌はその号から、糸瓜忌、獺祭忌とも呼ばれているが、そのことには後日触れることにしよう。

  秋めくや土の匂ひの柔らかく  英世

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