一句の風景

夜桜やをみなの声のよく透る

選者の星野高士先生より「本当に夜桜の賑しさを感じます、とくに女性達の声が楽しいでしょう。」と好評をいただいた句である。
福岡市の舞鶴城は桜の名所で、この年は三回花見に行ったが、そのうちの一つは夜桜見物であった。夜桜は昼の桜とはまた違った趣がある。
夜店の軒から軒へと渡されたらされた裸電球の灯りは、柔らかい光を放って桜に思わぬ光陰を作ってくれる。その光陰の桜を見上げながら、夜店で買ったイカ焼きやおでんなどをつまみながら、一杯の酒に酔いしれるのが夜桜の夜桜たる所以であろう。
夜桜の下では何故かよく女の声が遠くからでも聞こえて来た。
2015年(平成27年)4月「季題:桜(春)」

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地獄の釜の蓋

先日の吟行で、地獄の釜の蓋と言うとんでもない名前の花が西公園の草叢に生えていた。
正式な名前は金瘡小草(きらんそう)と言うシソ科の多年草で、山麓・堤防などによく生えるという。茎はよく分枝して地をはうように広がっている紫色の花である。
句友に草花にものすごく詳しい女性がいて、なぜこのような変な名前がついたのかと訊ねたところ、なるほどと納得させられた。
今の様に薬が発達していなかった時代、野草は貴重な薬剤で、中でも金瘡小草は医者いらずというほどの万能薬であったという。
医者いらずということで、地獄の釜の蓋は締められたままだからそのような名がついたのである。
昔の人は薬草にも詳しいし、面白い名前を付けるものだなと妙に感心させられた。

  悪名やその名も地獄の釜の蓋  英世

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西公園吟行

今回の百年句会はまたまた西公園であった。
この日の西公園は桜が散ってしまい花見客もいなく静かなものであった。
それでも吟行となると何か題材を見つけなければならない。目を皿のようにし、耳をすまして完全に俳句モードになる。
展望台に立てば藤棚の藤が小さな房を垂らしていた。頬を撫でる春風は心地よく、遠く見渡す島々は霞に沈んでいる。
とんびの舞う空からは様々な小鳥の声が聞こえてくる。シジュウガラのようなきれいな声があるかと思えば、鴉の濁声もある。
素晴らしい風景に出会った。日溜りの谷と名付けられた谷一面に、黄色に輝く金鳳花が群れるように咲いていた。長いこと西公園を訪れてきた私も、こんな金鳳花の群落を見たのは初めてあった。
そのような晩春の西公園を詠んだ一句をご紹介しよう。

藤房の沖に鵜来島紀記の島  英世

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四月馬鹿

春の雲と同時に出された兼題が四月馬鹿で、万愚節、エイプリルフールとも言われるものである。
「四月一日のこの日、軽い嘘をついても許されるとされる。いつ、どこでエイプリルフールの習慣が始まったかは定かでない」と歳時記では紹介している。
どうも西洋から入ってきた習慣らしいが、私にはなぜか馴染めない季題である。
解説にも書いてあるように軽い嘘やいたずらと言うのが本来の趣旨であるが、当節はそうとばかりは言っておられないからである。
インターネットが普及し、その軽い嘘のつもりが悪質な嘘となって世界中に蔓延する危険性もあり、このような習慣はさっさとやめてしまえばと思っている。
とは言え、その四月馬鹿を詠んだ今日の一句をご紹介しよう。

  寅さんと浜ちゃん好きで四月馬鹿  英世

春の雲

今回の鴻臚句会の兼題は「春の雲」と「四月馬鹿」であった。
まず春の雲だが、その名の通り春に浮かぶ雲のことである。ところが、春の雲と言ってもその特徴がよくわからない。
夏の入道雲、秋の鰯雲、冬の雪雲の様に特徴がはっきりしていればいいのだが。
歳時記によると「春の初めはあわあわとした雲。春が深まるにつれて、青空にぽっかりと浮ぶ雲も見られるようになる」とある。さてどのように詠んだらいいものか。
なお、時々飛行機雲の句を見るが、これはいががものであろうか。飛行機と言う人工的につくられた雲に季節感はなく、雲そのものというより別の季題に添えられた付属品のような気がする。
ともあれ、何度も空を見上げてさんざん考え上げた上での今日の一句をご紹介しよう。

  屋根の上に上るおてんば春の雲

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