どちらが寄りかかっているか

ずいぶん前の話だが、脊振山の尾根歩きで奇妙なものを見つけた。山の斜面で岩と樹がもたれ合い、どちらが寄りかかっているのかわからない姿である。
自然界のことだから突き詰めてみればわかりそうなものだが、岩が樹に、樹が岩に寄りかかっているようにも見える。
実はこのような現象は俳句にも時々見られる。
私が読んだ本の中に石田波郷の「霜の墓抱き起されしとき見たり」と言う句があった。
長谷川櫂は墓が抱き起されるのを波郷が見たと解釈する人がいたが、これは波郷が抱き起されたのである。しかもその墓は波郷がいずれ入るであろう墓で、抱き起された衝撃で波郷が垣間見たのかもしれないと解説していた。
私も霜の墓と言う上五の後のはっきりとした切れで、波郷は病床にある自分が抱き起され、あるはずもない自分の墓を見たのだと解釈した。
このようにどちらともとれる俳句は、連体形や切れの油断などで往々にして生まれがちなので注意しなければなるまい。

  秋暑し寄らば大樹の影とかや  英世

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